地質の窓
相模川流域の砂(平成30年3月)
相模川は富士山麓の山中湖から流れ出し、相模湾に注ぐ、長さ約110kmの河川です。山梨県内では桂川と呼ばれ、神奈川県内では相模川と呼ばれます。主な支流には、笹子川、葛野川、鶴川、秋山川、沢井川、道志川、串川、中津川などがあります。
同じ相模川・桂川流域の砂でも場所によって、砂の見かけが違います。桂川・相模川とその支流の砂は、富士山の噴出物、関東山地の岩石、丹沢山地の岩石の破片が混ぜ合わさったものです。富士山の噴出物は、主に玄武岩やスコリアです。スコリアは穴がたくさんあいた玄武岩質の溶岩の破片で、噴火の時に火口から吹き飛ばされて堆積したものです。玄武岩もスコリアも黒っぽい色をしています。関東山地の岩石は、主に、頁岩(けつがん)、砂岩、閃緑岩(せんりょくがん)です。頁岩は黒、砂岩は灰色です。閃緑岩は黒と白のモザイク模様です。丹沢山地の岩石は主に凝灰岩(ぎょうかいがん)類と閃緑岩です。凝灰岩類は緑色っぽいものが多く、閃緑岩は関東山地と同じ黒と白のモザイク模様です。場所によってこれらの破片の割合が異なるので、砂に違いができます。
山中湖の砂はほとんど富士山の噴出物の破片からできています。関東山地の岩石の破片は含まれません。
笹子川や道志川などの源流部はほとんど閃緑岩の破片からできています。富士山の噴出物が含まれることもあります。関東山地の岩石の破片は含まれません。
鶴川や沢井川の上流などの砂はほとんど関東山地の頁岩や砂岩の破片からできています。
道志川の支流の神ノ川や、中津川の支流の早戸川の砂はほとんど丹沢山地の岩石の破片からできています。閃緑岩よりも凝灰岩類の破片が多く含まれるので、緑色がかった色をしています。関東山地の岩石の破片は含まれません。
山梨県大月市あたりから下流の相模川・桂川は富士山の噴出物、関東山地の岩石、丹沢山地の岩石の破片が混ぜ合わさってできています。
相模川でも相模ダムのすぐ下流の砂は頁岩の破片ばかりでできています。ダムが上流から流れ込んでくる砂をせき止めているので、ダムのすぐ下流に分布している関東山地の頁岩の破片しか河原の砂に含まれていません。しかも、ほとんど川の水に運搬されていないので、あまり角が取れていません。
川の砂は上流や周辺の地質と環境を反映しています。場所による違いに着目して砂を観察してみても楽しいのではないでしょうか。
(地質担当 河尻清和)