地質の窓(平成23年度)

包丁岩(ほうちょういわ)~緑区名倉

 緑区名倉の山梨県との県境付近に、包丁岩と呼ばれている岩があります。この岩は南から北に突き出た細長い尾根状の地形をつくっており、包丁の刃を上にして立てたような形をしています。長さは50~60m、幅は土台部分では20~30mですが、岩の上の部分は馬の背中のようになっており、人が1人通れるくらいの幅しかありません。高さは30mくいらで、ほぼ垂直に切り立っています。
 岩の上は「人が1人通れる」といっても、滑りやすく、途中つかまる木も無いので、落ちたら最後、約30m下の谷底まで落ちてしまいます。非常に危険なので、岩の上を歩くのは無理です。

東側( シュタイナー学園付近)から 包丁岩を見下ろしたところ
Canon IXY DIGITAL 900 IS (17.3mm, f/5.8, 1/125 sec, ISO0)
東側( シュタイナー学園付近)から
包丁岩を見下ろしたところ
西側から見た包丁岩
Canon IXY DIGITAL 900 IS (17.3mm, f/5.8, 1/200 sec, ISO0)
西側から見た包丁岩
東側の麓から包丁岩を 見上げたところ
Canon IXY DIGITAL 900 IS (10.833mm, f/4.5, 1/125 sec, ISO0)
東側の麓から包丁岩を
見上げたところ
 包丁岩の頂部 付け根部分(左の写真の左側)から 先端(左の写真の右側)を見ています。
包丁岩の頂部
付け根部分(左の写真の左側)から
先端(左の写真の右側)を見ています。

東側の麓から包丁岩を
見上げたところ 包丁岩の頂部
付け根部分(左の写真の左側)から
先端(左の写真の右側)を見ています。
 包丁岩をつくっている岩石は、愛川層群中津峡層石老山礫岩(あいかわそうぐんなかつきょうそうせきろうざんれきがん)と呼ばれる礫岩です。名前のとおり、石老山(せきろうざん)を中心に分布している礫岩です。石老山礫岩(せきろうざんれきがん)は硬く、割れ目などができると、そこが集中して浸食されます。浸食(しんしょく)がどんどん進み、割れ目の少ない部分が削り残されて、包丁のような形になったと思われます。
 全体を見渡せる場所はなかなか無く、シュタイナー学園付近で木々の間から一部を見ることができます。

用語解説
礫岩:地質学では2mm以上の石ころのことを礫(れき)と呼びます。礫が集まってできた岩石のことを礫岩といいます。礫が集まっただけで、硬い岩石になっていなければ礫層(れきそう)といいます。
浸食:岩石や地層が、波や川、氷河などの水の働きや風の働きで削られること。
(地質担当:河尻清和)。

博物館実習生VS富士相模川泥流(ふじさがみがわでいりゅう)

 毎年、博物館では8月から9月にかけて学芸員実習生を受け入れています。実習生は、実習の一環として展示を制作しています。平成23年度の地質分野は、地層の剥ぎ取り方法や標本を紹介する展示を制作しました。
 2011年8月30日、相模原市緑区名倉で富士相模川泥流の地層の剥ぎ取り標本を作製しました。泥流(でいりゅう)というのは、泥(土砂)と水が混ざったものが谷や川を流れ下る現象のことです。通常の洪水よりも泥の割合が多く、大きな岩石を運ぶことができます。
 富士相模川泥流は、約2万2千年前に富士山麓から相模川を流れ下った泥流です。この泥流による堆積物の地層が相模川沿いに点々と残されており、相模原市内でも観察することができます。地層の剥ぎ取り標本については、「地層の標本を作製(平成23年3月)」を参考にしてください。
 今回、剥ぎ取り標本を作製した富士相模川泥流の地層は固く締まっており、剥ぎ取るのに非常に苦労しました。地層を固める薬剤が染み込みにくく、無理に剥ぎ取ろうとすると固まった薬剤だけが剥がれてきてしまいます。鎌で地層を削り取りながら、標本を作製しました。まさに悪戦苦闘。やわらかい地層ならば半日で10枚以上剥ぎ取ることができるのですが、今回は4枚しか作業ができず、しかも、実際に標本として使えたのは2枚だけ。1枚剥ぎ取るのに1時間以上もかかりました。

剥ぎ取る面を削って平らにしています
剥ぎ取る面を削って平らにしています
 鎌を使って、地層を剥ぎ取り中
鎌を使って、地層を剥ぎ取り中


剥ぎ取る面を削って平らにしています 鎌を使って、地層を剥ぎ取り中
 実習生はさらに、剥ぎ取りを紹介する展示を製作したのですが、ここでも悪戦苦闘。展示物の選択、解説文の作成、解説・写真パネルのレイアウト、展示作業、などなど。苦労しながら無事、展示を完成させることができました。
 平成23年度の博物館実習生制作展の展示期間は9月10日(土)から10月16日(日)までです。(地質担当:河尻清和)

陣馬山麓の黄鉄鉱(おうてっこう)

 相模原地質研究会のメンバーとともに相模原市緑区佐野川地域を調査中に、黒っぽい表面に金色に光る粒がばら撒かれたような岩石を見つけました。 この金色の粒は、もちろん『金』ではなく、黄鉄鉱と呼ばれる鉱物です。黒っぽい岩石は千枚岩(せんまいがん)です。この千枚岩は、泥が固まってできた泥岩(でいがん)が、さらに圧力を受けて薄くはがれやすくなった岩石です。千枚岩は陣馬山周辺でよく見られます。
 黄鉄鉱は、泥に含まれていたわけではなく、泥岩が変成作用(もともとあった岩石が熱や圧力によって、さらに別の岩石が作られる作用)を受けて、岩に含まれていた成分が結晶化してできたものです。
 黄鉄鉱は薄い金色というか、真鍮(しんちゅう)色をした、立方体や5角12面体をした鉱物です。鉄(Fe)と硫黄(S)の化合物で、化学組成で表すとFeS2です。本物の金より色が薄く、きちんとした結晶の形になりやすいので、簡単に金と区別できます。陣馬山麓の黄鉄鉱は大きくても直径1 mmくらいで、非常に小さなものですが、きれいな立方体をしています。(地質担当:河尻清和)

※岩石や鉱物などについてちょっと知りたくなった方は、次のような本をお薦めします。図書館で探してみては。
 『ニューワイド学研の図鑑 鉱物・岩石・化石』松原聰・猪郷久義・小畠郁夫 監修 学研 ・・・子ども向け
 『かながわの自然図鑑1 岩石・鉱物・地層』神奈川県立生命の星・地球博物館 編 有隣堂
 『楽しい鉱物図鑑』 堀秀道 著 草思社
 『楽しい鉱物図鑑2』 堀秀道 著 草思社

黄鉄鉱を含む千枚岩の標本
Canon IXY DIGITAL 900 IS (4.6mm, f/2.8, 1/250 sec, ISO0)
黄鉄鉱を含む千枚岩の標本
 千枚岩中の黄鉄鉱 金色、立方体の結晶が黄鉄鉱
Canon IXY DIGITAL 900 IS (14.694mm, f/5.6, 1/5 sec, ISO0)
千枚岩中の黄鉄鉱
金色、立方体の結晶が黄鉄鉱
黄鉄鉱の結晶 大きさは約1mm
Canon IXY DIGITAL 900 IS (17.3mm, f/5.8, 1/80 sec, ISO0)
黄鉄鉱の結晶
大きさは約1mm